抵抗

“小さな抵抗こそが希望になる”というテーマで不定期に記事を書いています。

当事者の痛みを理解できるまで

私が高校生の頃、1人の同級生が編入してきた。彼女は東日本大震災を経験して、私の住む県に引っ越してきたらしい。ニュースで取り上げられるような陰湿ないじめことなかったが、クラスは接し方に戸惑っている風ではあった。 ある時、試験勉強のために訪れた…

命の教育

2017年に当時の現行刑法の性犯罪規定が一新されたことは記憶に新しい。性交等強要罪ばかりが注目され議論は収斂したが、その陰で新設された監護者性交等罪も大きな一歩だと評価された。だが、よく見るとこれは主体を監護者に絞る規定であり、監護者は経済的…

夕日

数日経って発芽し、そこから大豆はみるみると成長した。それを見守る子どもど側もみるみると成長していく。「そんなに急いで成長しなくてもいいんだよ」って思わず言ってしまう。成長という言葉が持つこのポジティブな含意が、「脱成長」を議論する際に共鳴…

人権教育

人権を考えるときに重要な概念として「権利の保持者」と「責務の保持者がある」。前者は、生まれながらに人権を持つもの、すなわち市民一人ひとりを指している。だが、市民が人権を学び、社会への参画意欲を高めても、市民の人権を実現する「責務の保持者」…

夫婦別姓にみる女性軽視

夫婦別姓はあくまで選択的夫婦別姓なので当然、類似化できない夫婦の事情に際しては、別姓は認められるべきだと思う。 夫婦同士と別姓の選択を認めている国として、イギリス、ドイツ、アメリカ、ロシアなど。夫婦別氏を原則とする国はカナダ、韓国、中国フラ…

教育の目的

昨今、教育の結果によってその後の人生に截然と勝ち負けが決定されるかのごとく、教育機関が競争の場として頽落してきたように思う。思い返すと、昨今ほどではないが、日本は旧態依然として教育に対する認識が短絡的であった。一言で言えば、教育機関の独立…

第三のオリンピック

東京オリンピックが甚大な爪痕を残して幕を閉じた。参加した全ての選手と彼らを支えるサポーターには敬意を評したい。他方、日本に暮らす民へのイマジネーションを清々しいほどに欠いた日本国総理大臣と国際オリンピック委員会会長の前で歌われる「イマジン…

加速の立役者

久しぶりにみたテレビ、小学生の夏休みの課題特集があった。大豆の苗を学校から持ち帰った子どもは夏休みを使って大豆を育てるのだという。数日経って発芽し、そこから大豆はみるみると成長した。それを見守る子どもの側もみるみると成長していく。「そんな…

紙飛行機

たしかに、日本は少子高齢化する人類社会の先端をひた走ってきた。ほとんど孤独のトップランナーだったと言っていい。これまでのところは。 しかし、世界人口統計を読んで驚いた。日本は、東アジアでは出生率が最も高くなっていた。我々の少子化へ走る速度が…

教育から自由を奪うもの

2018年、文科省は、2022年度からの高校「公共」「地理総合」の新学習指導要領で、尖閣諸島、北方領土、竹島などが「我が国の固有の領土」であると明記するように指示した。つまり、これらの領土問題は、議論の余地を残さず生徒たちに伝達することが求められ…

民主主義を「する」ものへ

縁も所縁もない、あるいは全く遠い世界の学者先生の誰が日本学術会議の会員に選ばれようが、誰が政府によって拒否されようが、そんなことは我々の日々の暮らしになんの影響もない。「世論」の動向を見ているとそうとしか思えないのだが、しかし、それで本当…

アンウェアな社会

一週間ほど前、英国の大学院に進学をしているとある女性のブログ記事を読んだ。記事では、彼女が留学の機会をもぎ取るために必死で英語を勉強していた体験記が叙述されており、半年間で民間の英語試験を10回も受験し、そしてようやく基準点に達し、その立場…

脆弱性

新型コロナウイルスがすベての人の階級、地域、年齢、性差などにかかわらず被害をもたらすという警告は、一見正しいようではあるが正確ではない。いや、突き詰めれば間違いである。 ジャレド・ダイアモンドによれば、1492年、コロンブスが、イスパニョーラ島…

敗者の想像力

上京してはや半年を迎えようとしている。東京の冬は明るい。生まれ育った滋賀の山奥では、冬はいつも凜々としているが、夜は暗く、寒い。 ところで、先日、年末年始に先駆けて祖父母の家に訪れた。母親が子どもの頃の話に話題が移り、当時の高度経済成長期の…

紅葉と怒り

破竹の勢いで感染者を増しながら、「コロナ」は我々の日常生活を大きく一変させた。特に、宿泊業と飲食店は甚大な被害を受けたとされ、そこで働く多くの従業員たちは敢えなく職を失ってしまった。 そうした現状を鑑み、政府は主導となって幾つもの対策を講じ…

無辜のいのち

北風が吹き付ける日々が続く。広い世界には銀世界の地も泳げる地もあろうが、ここ東京の路地ではまだ落ち葉が風に舞い、枝先の僅かな残り葉が光を反射しながら、別れを惜しむように揺れる。冬の日差しは短いけれど、照りつけると厳しい。気のせいか、肌が焦…

「抵抗」ブログの移行について

平素よりお世話になっております。今回は「抵抗」ブログの移行について周知させていただきたいと思います。 振り返れば、私はブログ「抵抗」を高校3年生の時から書き続けてまいりました。不定期での更新でありながらもブログを書き続けてこれたモチベーショ…

崩壊は我々が支持した

時折どこからともなく秋を運んでくれる風によって、稲穂は少しづつ色付いていく。遠い彼方まで続く稲穂の波、伸びた畦道、そして丘や山々。日本に生まれたことの喜びを素直に感じる光景だ。蕎麦やパンなどを口にしていても、見事に育てられた稲穂には先祖帰…

不文律

待ち構えてみる花火、もちろん結構だが、この季節乗り合わせた列車の窓の闇にふと大輪の花火が咲いてくれるのはもっといい。列車はたちまち通り過ぎふたたび窓にきれいな花火をみることはない。目じりに残った光の粉をいつくしみながら旅を続ける。ひと夏に…

得手に帆を揚げる

東大出身で聡明な友人が自分の人生を大切にするために外の音を断捨離しているらしい。思えば自分も外の音をできる限り消音にすべくSNSを止めた。一人暮らしが再開し待てど届かない冷蔵庫を垂涎していたけれど、気づけば冷蔵庫が無くとも生活できることを知っ…

読者様へ

平素よりブログ「抵抗」をお読みいただきありがとうございます。当ブログの射程は「弱者からみた、強者への訴え」にあります。記事を書く際には、弱い者が感じる、痛み、歯痒さ、生きづらさ、矛盾、などを念頭に置きながらその対極に立つ「強者」への「抵抗…

働かせる自由の拡大・働く自由の縮小

労働者の破壊が凄まじい勢いで進行している。この20年で労働者の生命と健康と生活を守るための規制や保護が、次々と撤廃された。その変化を一言で言えば、「働かせる自由」の拡大、「働く自由」の縮小である。 企業は、正規雇用を非正規雇用に置き換え、労働…

オワコン

数日前、ある国連職員の方のポストが廃止されることが決まったという投稿を目にしました。まあそんなことはこの業界ではこれまでも多々起きていたことだと驚きはしませんでしたが、時を同じく、その方の職位を知り、私は呆然としました。国連機関の様相が変…

風鈴の音

風鈴の音が、いかにも涼しげなメロディーを奏でる。水を打った庭先からひんやりとした空気が気持ちいい。隅に置かれたうちわを手にして、ゆらゆらと動かしながら遠くに視線を送る。 日本の夏の古典的な光景だろうが、今の都会ではもうほとんど見かけない。こ…

無菌状態は健全ではない

子どもの頃、葡萄のぷりぷりとした小粒の実をいくつもほおばっては、もぐもぐと動かして実と種を取り分けた。甘酸っぱさが広がり爽やかな気分になりながら、空に向かってピッピッとザラついた種を飛ばす。あの開放感は、そういえば最近はほとんど味わってい…

近況報告

こんにちは。8月からキャリア転換、そしてそれに伴い自分の中の優先順位を見直すことにしました。下記、ご報告まで。 1. SNSを止めました。 アカウントも既に削除しております。お世話になった方々、本当にありがとうございました。この決断に至った理由はい…

令和は輝ける社会に

海外から日本に戻ると、言いようのない違和感を覚えはじめてかれこれ数ヶ月になろうか。その度ごとに、一体何がこれほどいらいらさせるのだろうかと長い間、モヤモヤしてきた。やがて、私たちの顔、その表情ではないかと思い始めた。 日本人は、豊かな表情を…

私はヌジューム、10歳で離婚した

2019年3月16〜5月上旬、児童婚をテーマにした映画「私はヌジューム、10歳で離婚した」が東京・名古屋・兵庫で上映された。物語は中東のイエメン、10歳の少女ヌジュームは1人で裁判所に駆け込み、離婚をしたいと訴える。この作品は、2008年にイエメンで実際に…

構造的暴力

平和な世界とはどういうものなのだろうか。戦争がない世界と考えたとしても、現代の世界には貧困や人権侵害などが様々な国で存在し、それは先進国でも例外ではない。社会的構造が貧困や環境問題を生み、人間が本来持っている寿命や可能性などを阻害すること…

二つの奇跡

「橋の所には、人がいっぱい死んでいました。真っ黒に焦げて死んでいるもの、ガラスのかけらがからだにいっぱい刺さって死んでいるもの、いろいろいました」「川縁には死体がそこら中にごろごろしていた。その中にはまだ死んでいない者もあり、『お母さーん…