抵抗

“小さな抵抗こそが希望になる”というテーマで不定期に記事を書いています。

消費税撤廃でも実質賃金は上昇しない

 

山本太郎氏の最大の主張に「消費税廃止」が挙げられます。ここでの公約にも「消費税を無くした6年後には、一人当たりの賃金が44万円上がる、初年度に物価が5%以上下がる」と明記されています。
しかし、消費税撤廃で大幅に物価が下落するということは、デフレが一層進むということを意味します。少なくとも、製品や原材料の在庫はその分だけ損失が発生します。さらに価格支配力が弱い中小企業が、消費税の減税をまるまる、消費者に還元するとします。しかし、価格の下落に応じて販売量が増えるかどうかはわかりません。長い間、多くの人々の賃金が下がり続けてきたので、依然として低価格思考を続けると、生き残りをかけて価格の引き下げ競争が起きます。そうなれば、賃金水準が上がるという保証はどこにもありません。販売量が増えなければ、これまで同様、非正規雇用や外国人労働者を増やすことで、企業は利益を確保する可能性が高いでしょう。
 一方、一定の価格支配力を持つ大手企業は、消費税の減税分の価格を引き下げなくてもいいかもしれません。さらに輸出企業は消費税の戻し税分がなくなるので、価格の引き下げは限定されます。仮に販売量が維持され利潤が上昇したとしても、それでも、企業が減税分だけ労働分配率を上げて賃金支払い分を増やすとは考えられません。実際、この間、法人税減税があっても、ずっと内部留保や配当を増やしても労働分配率を減らしてきたからです。それゆえ、この20年間、物価下落率以上に賃金下落率が大きくなり、あるいは賃金上昇率は物価上昇率を下回り、物価下落基調にも関わらず、継続的に実質賃金が下落を続けてきたのです。つまり、消費税減税の効果は、企業の行動次第によって大きく左右されるのです。そう考えると、消費税減税、または撤廃が物価を引き下げ実質賃金を引き上げて、内需主導で景気回復するというシナリオはかなり疑わしいと思います。

 

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