抵抗

“小さな抵抗こそが希望になる”というテーマで不定期に記事を書いています。

国際機関を目指す学生は修士論文を英語で書くべきか

こんにちは。

 

 今日は修士論文・博士論文を書く際、国際機関を目指す学生は英語で執筆すべきか、について私なりの意見を述べさせていただきます。海外で学位を取得する院生は当然英語での提出が求められるため、問答無用で英語になりますが、日本で学位を取得する場合は、どちらで執筆するのが良いのでしょうか?

 まず、修士論文に関するざっくりとした筆者の意見は以前別枠にて述させていただきました。今も当時と同じ考えを持っていますので、当時の記事を貼っておきます。

 

ogrenci.hatenablog.com

 

 前回の記事を一言で要約すると、「近年、修論の評価は研究手法を重視する傾向にあるが、修士の学生であれば、研究手法よりも、どれだけ多くの論文を読んだか(量の取り組み)、そしてそれらをどれほど綺麗に纏めることができたか(質の取り組み)、この点が評価されるべきである」というものです。この考えに至る理由は主に2つあります。1つ目は、膨大な既存の研究を無視して修論を執筆してしまうと、研究の潮流もわからないまま、客観性のない主観的で、学術的には相当価値の低い論文になってしまうからです。2つ目の理由は、研究手法というのは、既存の文献を読み漁る過程で理解していき、身に付けていくものだからです。ですので、文献レビューを蔑ろに、研究手法のみ拘泥すると、適切な研究手法の選定ができないのです。指導教員によっては「内容がきちんと纏まっていれば、修論は30ページでよい」と考える人もいますが、その考え方はよくないと思います。なぜなら、きちんと文献を読み漁り、それらを纏めるだけで、必然的に文字数は嵩んでいくからで、短すぎる論文は主観性が強くなってしまいます。

 さて、国際機関を目指す大半の方は文系だと思われますが、文系の領域だとほぼ全てにおいて日本人が先人を切って研究をしている分野はありません。そのため、文献レビューは多くの場合、海外で行われた既存の研究を読み漁るため、英語の文献を引用することになります。当然、英語で論文を書くのであれば、それらの引用を日本語に翻訳する作業が省けるため効率は良いと言えます。さらに、英語で論文を書くことで、長い目で見たときのキャリア形成に役に立つと思われます。特に、将来研究職を目指す方は、英語の論文を執筆しておくことは重要です。

 これらを踏まえた上で、筆者はあえて修論を日本語で執筆しました。当時から国際機関で働きたいと考えていたため、「もしかすると、将来の上司に論文を見てもらう機会があるのかもしれない。その場合、英語だと読んでもらうことができる」ということは当然考えていましたが、それでも日本語で執筆することにしました。以下、筆者が日本語で執筆した理由を述べていきたいと思います。

 

1: 質の高い修論を書きたかったため、英語での執筆を諦めた

 

 前述した通り、既存の研究は英語で書かれたものが大半です。一方で、既存の研究を引用する部分は全体の中で一部に過ぎません。そのため、日本語で執筆することで、全体的な執筆スピードは上がります。筆者は「混合研究法」と称される、質的調査と量的調査の両方を用いた研究方法で修論を書くことに決めていました。そのため、通常の修論よりも文字数が嵩み、時間もかかります。英語での執筆に拘泥することで、内容が疎かになるのではないかと考えました。納得のいく修論を書き上げたかったこともあり、日本語で書くことにしました。

 

2: 修論は重要、ただそれ以上に重要なものもあった

 

 修士課程の2年間は非常に短いです。そのため、どこに重きを置くのかは非常に重要な焦点になってきます。大企業に入りたい院生は1年の時からインターンに注力し、夏前まで就職活動にリソースを使いますし、博士課程に進みたい院生はきちんと授業に出席し、それ相応の修論を執筆することにエネルギーを注ぎます。筆者は国際機関に入るためにある程度のスキルが必要だと考えていたため、スキルアップに時間を割くことにしました。修論にも当然拘っておりましたが、どこかで均衡を取る必要がありました。英語ではなく日本語で執筆することにより、浮いたリソースをスキルアップの時間に使うことができたと思います。また、専門的な知識も身に付けたかったため、そうした学習時間を設けることができたことも良かったと言えます。何の専門性もないまま、卒業することだけは避けなければならないと考えていました。

 

これまで述べさせていただいたことを踏まえると、

 

ー日本の大学院で日本語で修論を書いた方がいい場合ー

・研究者を目指さない人

・実際の学びを重視する人

・そもそも就活のために院進した人

・日本語で納得のいく修論を書きたい人

 

ー日本の大学院で英語で修論を書いた方がいい場合ー

・将来研究者を目指す人

・相当英語力が高い人

・博士課程への進学を考えている人

・英語で論文を執筆してみたい人

 

 

 国際機関で働きたいと考えていらっしゃる方で、将来博士課程を検討されているのであれば、英語での執筆も良いと思われます。ただ、何のアウトプットもできないまま修士を卒業してしまうくらいであれば、日本語で修論を書くことでご自身のリソースを節約し、その分、インプット・アウトプットの部分にリソースを使うというのも、良いのではないかと思っています。

 

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