抵抗

“小さな抵抗こそが希望になる”というテーマで不定期に記事を書いています。

Hopeless

 

 コロナで顕在化したのはこの国の貧困であった。私自身、現代の貧困問題については体験的に理解しているつもりだったが、私の表面的な理解を超えて社会の「貧困」がここ数年で一気に加担していることが余すところなく明らかにされたように感じた。とくに衝撃を受けたのが高卒の就職難であった。既に随分と前から高卒の正規雇用は急減しており、高卒後即正規雇用というこれまでの雇用環境の崩壊は、それより上の学校に行けない階層にとっては、親も子も不安定雇用化が固定化されることを意味しているということも、明らかにされている。 

 「まじめにコツコツと働けばなんとかなる」「高校ぐらいは出ておかなければ社会から相手にされない」という言葉は空虚になりつつあるということなのか。生活保護を利用している世帯にとって、自立した生活に戻る大きなチャンスは子どもの就職である。ところが、現状はそのチャンスが有効性を失いつつある。つまり保護からの自立がさらに遠のくことを意味している。それでなくとも、不登校や問題行動など子どもたちをめぐる状況は大変だ。そんな子どもたちがいろんな葛藤の末に立ち直ったとしても社会は受け入れようとしなくなりつつあるということだろうか。子どもたちが未来を信じられなくなるような社会はどんな社会なのか。

 生存権とか教育権とか勤労の権利とか、人類が多大な犠牲の上に獲得した20世紀の社会権といわれるものは、「弱肉強食」「人間は飢餓状態の恐怖を前にして競争させたらなんぼでも働く」というすでに克服したと思われる浅薄な人間観の前に存在意義を問われているのだろうか。ごく一部「勝ち組」を除いて、かなりの階層は「負け組」にいつなってしまうかもしれないのが現状である。

 ホームレスが実は「ホープレス」ということも考えられるが、未来を担う子どもたちが「ホープレス」にならないように、それぞれが自分の持ち場で踏ん張るときなのだろうかと痛切に感じた。

 

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