抵抗

“小さな抵抗こそが希望になる”というテーマで不定期に記事を書いています。

就活中のセクハラについて

大企業への内定を有利に進めるためには、現場で働く社員を訪問するOB訪問がカギを握ると言われていた時代から、今はそれが絶対条件になってきている現状がある。そうした流れにシフトしてきて以降、毎年のように女子学生がセクハラの被害を受ける事件が報告される。

2016年には、トヨタ自動車の系列企業の大手部品メーカーの採用試験を受けた元女子大生が、当時の同社幹部男性から合格と引き換えに不適切な関係を迫られたとして損害賠償訴訟を起こした。

2017年には大林組の幹部が内定をちらつかせ女子学生を酩酊させホテルに連れ込んだ。まもなくこの学生は内定を得たが、その後も強制的に関係を迫られていた。

そして2019年に入った今年、5大商社の一つである住友商事の職員が、居酒屋で女子大生に一気飲みを強要し泥酔させ、女子大生が予約していたホテルに侵入し性的暴行を加えた。

大手で起きた問題という理由で事件は大々的に明るみに出たが、今この時期この瞬間にも被害に遭っている女性は少なくないだろう。以下、男性が持つ誤った認識について3点指摘しておきたい。

セクハラという行為に「減るもんではない」とする意見について。

セクハラは精神的なダメージが大きい。ゆえに暴力の痕が可視化されにくく、見えないところで被害者が受けた痛みの深さを知る必要がある。「セクハラ」という短縮形の言葉の軽さにも注意が必要だ。太ももや腕を触られて抵抗をすると「減るものではない」と言われることがある。これは間違いである。減るのである。何が減るのかというと、自尊心が減るのだ。相手は自分の個性や魅力ではなく、女性という属性のみに着目して性的な扱いをする。そのように扱っても構わない存在だとみなされている。そのことが行為を向けられた女性の自尊心を損なうのである。

「強要はしていない」という主張について。

加害者の主張として「私は強要はしていない」というものがある。その主張自体は嘘ではない。なぜなら、彼らに強要をする必要はないからだ。就活生と飲んで、自分が会社で持つ権限を話して、食事の後に「じゃあホテルに行こうか」と言えばいい。「誘いを断れば内定は出さないぞ」と口で言わなくとも、学生には十分伝わるのである。だから彼らに自分が「強要した」という自覚がない。立場を使い権力を振るっているという自覚がないのだ。

「合意」があったという主張について

加害者の主張の中に、行為自体には「合意」があったとするものがある。しかし彼らの主張する「合意」が実は「同意」でしかなかったと言えると思う。合意と同意という言葉の違いについては、合意が「意思が一致すること。両性の合意。合意に達する」と辞書には載ってあり、一方で同意は「他の人の意見に賛成すること。計画に同意する」と書いてある。つまりは、合意は両者の意見や意思が合致したものであり、同意はどちらかの意見に対し一方が賛同するといった意味の違いがある。

言うまでもないが、就活という構図の中では、支配する者と支配される者という立場に分かれ、決して両者が対等な立場で話すことなどできない。そうした背景がある中で、「合意があった」といった主張は筋が通らない。

 

日本は99%以上が中小企業であり、大手企業は見本となるよう先陣を切ってフェアに採用活動をするべきである。大文字の「権力」だけが権力ではなく、さまざまなところ、ミクロなところにも権力関係がある事を社会全体が認識できるまでにあと何回誤りを繰り返す必要があるのだろうか。

 

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