抵抗

“小さな抵抗こそが希望になる”というテーマで不定期に記事を書いています。

紅葉と怒り

 破竹の勢いで感染者を増しながら、「コロナ」は我々の日常生活を大きく一変させた。特に、宿泊業と飲食店は甚大な被害を受けたとされ、そこで働く多くの従業員たちは敢えなく職を失ってしまった。

 そうした現状を鑑み、政府は主導となって幾つもの対策を講じた。補助金の拡充はその例である。しかし、一見被害者を救済すると思われた制度も、実際には本当に助けを必要とする層がアクセスできなかった事実がある。

 その理由の一つに、申請に必要な手続きの複雑さが指摘される。普段聞き慣れない難しい言葉羅列され、申請には何枚もの書類を提出しなければならない。大企業であれば、会社に所属する専門家がスムーズに手続きをこなせたり、お金を払って外注したりもできるだろう。しかし、個人経営の飲食店などはそうした知識もお金もなく、結果として機会損失に泣いた。

 私は東京に越してきて、頻繁に通う飲食店があった。人目につかない裏路地にある店だが、店主はいつも笑顔で私を招き入れてくれた。先日、仕事終わりに店主から電話が入った。コロナの煽りを受け、店の経営が難しくなり、この度閉店を決断したという。私は咄嗟に、「補助金の申請はしましたか?」と問いかけた。店主は一言、「手続きが複雑でわからないんだよ。政府は、我々のような層が手続きを理解できず申請してこないように、内容をあえて複雑にわかりにくくしているんだと思う。弱者救済の助成金までも強者優位な制度になっていることが歯痒い」と、小さな声で呟いた。

 政府の愚策の一つとしてGoto eatがある。思い返せば、このキャンペーンも結局は各地でフランチャイズを展開する大規模飲食店の登録が目立ち、本当に助けを必要としている個人経営の飲食店の参加の少なさが目立つ。

 店主との電話を切った帰り道、政府に対する怒りを訴えるかのように紅葉は赤く色付いていてた。

 

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