抵抗

“小さな抵抗こそが希望になる”というテーマで不定期に記事を書いています。

不本意非正規労働者

日本の労働市場における問題は多くあるが、非正規雇用の増加はその中の大きな一つだと言える。「人に雇われている人」のうち非正規の割合は38%を占め、パートで働く主婦や学生アルバイトを除いて、正規で働きたくても働けず、やむなく非正規で働く人が700-900万人存在する。こうした不本意正規雇用は、正規雇用と比較して給与水準は低く社会保険への加入も限られる。


雇用の流動性が低く、新卒一括採用を基本とする日本の企業において、スタートラインが正規か非正規かの違いは大きく、特に20歳代のキャリア形成に大きな影響を及ぼす研修や教育の機会を、非正規の人は奪われている。大きな仕事を任される正気職員と、単調な仕事を続ける非正規職員の賃金格差は年を追うごとに広がり、昇給や昇進にも大きな差がつく。

 

さらに心配なのは1000万人近い非正規の人が将来低年金、無年金に陥る可能性である。厚生年金保険に加入したとしても、報酬比例部分は正規の人と差が大きく、現役時代の賃金格差が定年後も年金額に反映される。非正規の人は賃金が低いため未婚率も高く、将来身寄りのない一人暮らし高齢者となる可能性が高い。今後AIの普及や外国人労働者流入に伴って、スキルの乏しい不本意正規雇用の失業率は一気に高まる。ホームレスや生活保護に頼る人が増えるのが心配だ。


一億総中流は50年代から60年代にかけての過去の話で、今の日本は超格差社会に入りつつあるのではないか。それなのに安倍首相は非正規雇用の増加には触れず、総雇用者数の増加をアベノミクスの成果として声高に主張する。


目先の景気浮揚に頭がいっぱいで、喫緊の課題を先送りにする安倍政権がこのまま継続していいのか、国民一人一人の学習能力が問われている。

 

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