抵抗

“小さな抵抗こそが希望になる”というテーマで不定期に記事を書いています。

綻び

ドナルド・トランプ氏が多くの予想を裏切り当選してから早くも4年目を迎えた。彼が大統領に決まった時、直感的に「気持ち悪い時代になった」と思った。日本のメディア・有識者の多くは「まさか」を繰り返し、事態に対応し切れていないように思えた。かくいう私自身、トランプ氏の当選は予想外の結果であり、彼の当選は世界にとって受け止め難いことであった。かといって、彼が大統領に就任する可能性がゼロだったかというと、そうではない。ヒラリー・クリントン氏と二分した投票数は、当選確実が報じられる直前まで逆転に次ぐ逆転で伯仲した。

 それでも、あまりに攻撃的で毒々しい彼の振る舞いと発言を目にするたびに、「こんな人が超大国のリーダーとして選出されるわけではない」と、どこかで不安を押し流して来た。彼が次期大統領になることが現実になった時、アメリカ社会の大きなうねりと、それまで表面化してこなかった鬱憤に、アメリカはもちろんのこと、世界中の多くの人が触れたような気がする。

 大統領選出直後に行われた会談を終え、安倍総理は「信頼できる指導者」とトランプ氏を評した。ややもすれば選挙の過激な発言が実行されかねないギリギリのところに立たされていて、気後れしている様子が透けて見えた。実際、トランプ氏が当選して以降の安倍総理の言動は、常にトランプ氏を意識したものであり続けている。

 「メキシコ移民は徹底的に排除する」。人権をまったく無視したトランプ氏の演説は、一部で「道徳的に言ってはならない本音を代弁してくれた」と歓迎された節もある。移民の流入によって疲弊したアメリカ経済の不満堆積を可視化したことは大きい。これまで選挙の恩恵に与れず、蔑ろにされてきた白人中間層を選挙へ向かわせた功績もあるだろう。しかし、自由や民主主義の信条に、「世界の警察」を自負してきたアメリカは瓦解したのではないか。差異を認め、受け入れることで成長してきた国が、レイシストと受け取られて仕方のない言動を繰り返す者をトップに選出したこと自体、悪い意味で特徴的である。

 グローバリゼーションを掲げる陰で、不満を募らせる人がいた。そして世界は、どんどん息苦しく狭いものになってきた。アメリカファーストを支持するトランプ氏が当選したことで、世界は窮屈で貧しい時代を迎えるのではないかと思った。そして、そのほころびは既に現れている。

 

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