抵抗

“小さな抵抗こそが希望になる”というテーマで不定期に記事を書いています。

若者の活字離れ

 

 若者の活字離れ、新聞離れといわれるようになって久しい。私もニュースは新聞やネットでとりあえず十分かな、と思うこともある。しかし、大きな勘違いがあることに気づいた。つまり私の世代はこれまで新聞や雑誌、本などをある程度読んできて、それなりに社会の現実や国際情勢について一定の常識は身につけ、その上での日々のニュースをどうキャッチするか、であった。しかし、私のちょうどすぐ下の世代の場合は、そもそも新聞をあまり読まないし、学校では現代史や現代社会についてはまともに教えない。そもそもの「素地」がほとんどない状態である。それで、ネットやテレビのニュースだけで世の中を知ろうとしている。

 このことがいかにとんでもないことであるか、直感したのは、実は例の朝日新聞問題だ。社内では幹部と一線社員の会合が何回ももたれたようなのだが、新人社員の話の中で、大学の友人たちに「あんな売国奴の新聞を受けるのか」といわれたという経験談が出てきたという。特に国粋主義的な大学ではない、普通の大学で、しかも朝日新聞に合格するような一定程度の社会問題に意識を持つ学生の友人たちが、そういう認識を普通に持っていることがうかがわれるのだ。

 勿論、以前から朝日は左がかっているといった印象論は語られてきたが、それは一応新聞社としての存在は認めながらも、そういう傾向があるうという話だった。しかし今は、存在自体が認められないものだという認識なのだ。これはネットの影響しか考えられない。

 ヤフーなどのサイトを見ると、まずニュース自体に産経などの右派系のものが目立つし、検索をすると上位には、客観的な審査を受けない「ウィキペディア」につづき、2チャンネルなどの誹謗中傷サイトが続くことも珍しくない。「知恵袋」などの質問箱も、質問も回答もヘイトスピーチまがいの偏見に満ちあふれている。

 こうしたネットしか情報源がなく、しかもそこに書かれているものが事実だ、と思い込んでしまう、その結果の一つが「朝日新聞売国奴」だろう。ニュースサイトでも、新聞社や通信社などの「プロ」のサイトに行けば、そんな記述はないのだが、なぜか、こうしたネット漬けの若者たちは、既存メディアに根強い偏見があり、信用しようとしないのだ。

 朝日新聞に対する偏見は分かりやすい一例に過ぎない。こうして、歪んだネット知識で、世の中のことを知ったつもりになっている若者が、社会にどんどん出てきていると言うことなのだ。これは恐るべきことと言わなければならない。この事実を私たちはもっと真剣に考えるべきだ。

 

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