抵抗

“小さな抵抗こそが希望になる”というテーマで不定期に記事を書いています。

底無しの格差拡大

 

 今日本で貧富の格差を巡る議論が盛んである。国会で野党が安倍政権に対して格差の拡大を攻撃するのに対し、安倍首相は格差は拡大していないと反論する。

 所得の格差には、競争の結果という一面がある。市場経済の社会であれば、ある程度格差がつくのは避けられない。また、一度は敗れても、再び挑戦できる柔軟な社会であれば、多少の格差は問題にはならないのかも知れない。警戒しなければならないのは、格差が固定化して、こうした再挑戦が難しい社会になってしまうということである。

 倒産すると再び企業しづらい。低所得者の子どもが十分な教育や職業訓練を受けられない。そうした環境であれば、所得の格差が世代を超えて引き継がれてしまう。人々の不満や失望が膨らみ、社会の安定を脅かすことにもなる。不況で低所得を強いられた人や無気力化した若者が再挑戦するには、雇用支援や教育、訓練が欠かせない。とはいえ、こうした人々を支えるセーフティーネットを整えるには、財源の裏打ちが必要だ。所得税の税率区分を見直して、高所得者の負担を重くする一方で、低所得者への減免措置を手厚くするのも一策だろう。

 格差拡大を容認することは、拡大の否定以上に挑戦的だ。ある程度の所得格差が生じるのは仕方がない。しかし行き過ぎると、不平等が世代を超えて階層が固定化され、教育や職業選択の機会不平等につながる。人生のスタート時点から希望が持てず、生きる気力がわからない社会になれば、経済活力も失われる。格差是正のためには、多様な施策が必要だが、まず低所得者層の底上げが必要である。例えば、正規労働者の過重労働を緩和して仕事を分け合ったり、最低賃金を引き上げたりすることで、低賃金の非正規労働者の急増に歯止めをかけることが急がれる。

 国民に強く自立を求める米国のような社会か、欧州のようにセーフティーネットや再配分政策を重視する社会か、格差拡大に注目が集まっている今だからこそ、国民に是非を問うべきではないか。

 野党だけではなく、与党である公明党自民党内からも格差拡大を懸念する声が出ている。両者の意見のどちらがより妥当かを考えることは、今後の日本の針路を考える上で、極めて重要な課題である。

 

f:id:ogrenci:20200128162236p:plain