抵抗

“小さな抵抗こそが希望になる”というテーマで不定期に記事を書いています。

NHKの存在意義を問う

 大晦日の夜になると実家では「NHK紅白歌合戦」を観ることが恒例行事となっている。どのような選定基準により歌手が選ばれるかについては、毎年歌手の顔ぶれを見ている私からすると実に腑に落ちない。とはいえ、今回の紅白歌合戦では、例年稀に見ないほど奇妙な映像が流れた。多くの視聴者も同じ疑問を抱いたと思うが、我々は歌番組を観ているのか、それとも東京五輪の特番を観ているのか、終始よくわからないまま番組が終わったのである。番組では、曲の合間に選定された歌手へのインタビュー映像が流れるかと思いきや、なぜか歌手ではなく東京五輪に出場する選手へのインタビュー映像が流れたり、挙げ句の果てには、大トリを勤めるグループは、完成したばかりの新国立競技場を舞台に歌を披露していた。私には国ぐるみで国民を東京五輪に関わらせようとする政府の意図が透けて見えた。
 東京五輪には多くの問題が山積みされている。炎天下の中、無給のボランティアを募って大会を運営しようとする「無償ボランティア問題」。文科省は全国の大学に向けて「ボランティアの参加を促す」と表記された通知文章を送っている。当然、ボランティアであれば雇用契約は発生しないため、万が一の事故の際にも国は責任を回避できる。
 新国立競技場の建設費問題もある。建設費の膨張などで国民を不安にさせては、結局儲かるのは大手ゼネコンのみであり、下請けは依然、劣悪な環境下で酷使される。また、五輪が終わった後のジレンマの問題もある。過去五輪が開催された国では、一時的な経済成長はみられるものの、その後の衰退は目に余るものがある。
 こうした五輪開催に関する問題は多く残存するが、国の公共放送であるNHKが意図的に「東京五輪を成功させるんだ」という空気を、国に忖度しながら作り出している。この問題の大きさは注目されるべきである。今回のNHK紅白歌合戦を一言で表現すれば「奇妙」の他ならない。

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